楽天投信レター

相場対策

当レポート対象月である10月は、この数か月、多くの市場関係者が気を揉んでいた二つの事に関し大きな進展がありました。一つはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオにおける株式組入比率の大幅な引き上げ、そしてもう一つは日銀による追加金融緩和です。

GPIFの基本ポートフォリオでは、基本的な資産構成割合における国内株式への割当が12%から25%に引き上げられました。GPIFの運用資産は2014年6月末で実に127兆円、そのうち国内株式の割合は17.26%ですから、この割当を25%にするには、約9.8兆円という莫大な金額の国内株式の買付が必要となります。

一方、日銀の追加金融緩和においては、年間約3兆円に相当するペースで、代表的な国内株式指数に連動するタイプのETFの保有残高を増加させるとしています。

当然に市場は大きく反応し、国内市場は暴騰、そしてその晩の海外においても各国株式市場は概ね上昇しました。 これら自体は大変に結構なことなのですが、気になるのは将来です。GPIFが国民の年金であり、そして少子高齢化が問題となっている以上、投資したその資産は将来換金して年金として支給する時が来ます。また日銀のETFやJ-REIT買入れにしても、いつかはそれを市場に放出する算段をしなければなりません。そして、これらの買付が市場の好需給としてもてはやされる巨額なものである以上、売却の際には逆に大きな需給悪化要因になり得ます。

そんな事態にならないためには、市場の資金需給に関わらず、上場企業の企業価値が上がっていくこと、そして市場で付く価格が企業価値を適正に反映するような市場メカニズムが機能し続けることが必要です。日本企業のROE(株主資本利益率)向上の問題やコーポレートガバナンスの問題等も議論がスタートしていますが、これらは、日銀の追加金融緩和のようにすぐ結果が見える相場対策とは異なり、時間のかかるものです。目先の安心感により気を抜き、これら議論がおざなりにならないか、皆さんとともに注視していきたいと考えています。

Vol19
2014.10.31
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