楽天投信コラム

毎月分配型投信でよく聞く「カバードコール」の「本来の利用目的」

今回は、毎月分配型の投資信託でよく使われている投資手法、「カバードコール」についてお話しします。

「よく使われている」と言いましたが、「いや、そんな言葉は聞いたことがない」という方も多いかもしれません。この手法を、「インカム・○○○」とか「プレミアム・△△△」といった各運用会社独自のネーミングで説明している投資信託も多く見受けられるからです。

楽天投信投資顧問でも、人気ファンド、「トリプルエンジン」シリーズ※では、カバードコールによる投資手法のことを「インカムプラス戦略」と名付けています。今でこそすっかりポピュラーになったこの手法ですが、実は当社は、個人向け投資信託でカバードコールを採用した草分け的な運用会社のひとつです。

さて、カバードコールは、「投資対象資産の保有と、それを対象にしたコールオプションの売りを組み合わせる」手法です。例えば、米国リートの分散された指数に連動するETFを保有し、それと同時にそのETFを対象とするコールオプション(所定の期日に所定の価格で対象とするETFを買う権利)を売却する、ということです。

コールオプションの詳細や、対象資産を単純に保有するだけの場合と比べた損益の違いの仕組み等は、各投資信託の資料をよくご覧いただきたいのですが、なぜ各運用会社が毎月分配型の投資信託でこれを多用するのかというと、「オプション料」を受け取ることにより、それを分配金の原資にする、といった説明ができるからです。

それはそれとしていいのですが、「カバードコールを利用する本来の目的」は、実は一般的には分配金ではなく、リスク・リターン特性の向上にあります。コールオプションの値段は、その理論的な価格よりも割高になることが多いとされ、そうした割高になりやすいものを売り続けるカバードコールは、単純に対象資産を保有するのに比べ、中長期的にリスク・リターン特性が優れたものになる傾向があると考えられているのです。

そこで一定の仮定を置いてシミュレーションしてみましたのが以下のグラフです。米国リート指数への連動を目指すETFを保有し続けたものと、それにカバードコール戦略を組み合わせたものの推移です。

米国リート指数への連動を目指すETFを保有し続けたものと、それにカバードコール戦略を組み合わせたものの推移(2005/1-2015/1)
期間:2005年1月末から2015年5月末(月次データ)
出所:Bloombergのデータをもとに楽天投信投資顧問作成
米国リートETF:iシェアーズ米国不動産ETF
2005年1月末を100として指数化

【シミュレーションに係るご留意事項】
上記「米国リートETFカバードコール戦略シミュレーション」のグラフはiシェアーズ米国不動産ETFを保有しながら、期間1か月のコールオプションを売却し当該権利料(オプション料)を再投資した場合の仮想リターンです。コールオプションを定期的に売却するカバードコール戦略の中長期的な投資効果のイメージを見ていただくためにのみ作成しています。これらはiシェアーズ米国不動産ETFのオプションの市場価格から逆算される「インプライド・ボラティリティ」等の各種パラメータを利用し、仮想的にオプションの期限を設定し定期的に売却するなど一定の前提を置いてシミュレーションした結果であり、実在するファンドのポートフォリオや、基準価額の推移ではなく、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

グラフを見ていただくと、ETFが大きなリターンとなっている期間は、カバードコール戦略の特性としてETF自体よりも上昇が穏やかになりますが、下落時の度合いがやわらげられるとともに、全体として安定的なリターンになっているのがお分かりになると思います。これがカバードコールの本来の目的です。

現在、米国の金利上昇が見込まれており、株式相場の見通しにも強弱感が対立しています。弱気要因としては、金利上昇は基本的にリスク性資産全般に良くないということ、そして強気要因としては、そもそも景気がしっかりしているから金利を上げるのだ、ということが挙げられるでしょう。

もし、「米国の金利上昇は見込まれるものの、相場の足腰自体はしっかりしている」という後者の相場観をお持ちであれば、カバードコール戦略を採用した投資信託も選択肢に入れてよいかもしれません。

ただし、長期投資の王道は、「中長期的に収益が得られる構造にあると信じられる資産に分散投資し、目先の相場環境に惑わされてやみくもに入れ替えず、徹底的に持ち続けること」であることは、いつものように付け加えさせていただきます。

※「トリプルエンジン」シリーズ:「楽天USリート・トリプルエンジン(レアル)毎月分配型」「楽天USリート・トリプルエンジン(豪ドル)毎月分配型」「楽天USリート・トリプルエンジン(トルコリラ)毎月分配型」を指します。当コラムは情報の提供のみを目的としており、これら投資信託をはじめ特定の投資商品の勧誘や推奨等を意図するものではありません。特定の投資商品の購入のお申込みの際は、販売会社から投資信託説明書(交付目論見書)等をあらかじめお受け取りのうえ、詳細をよくお読みいただき、投資に関する最終決定は、ご自身の判断でなさるようお願いします。

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2015.7.12
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